レモンが授ける人生の知恵―PPM「レモン・トゥリー」

洋楽たけなわの60年代、わたしは小学生かな、ピーター・ポール・アンド・マリーPPMというフォーク・バンドがいた。「パフ」で有名だけど、ちょっと変わった、面白いメッセージ・ソング?があった。

ある日、父親が子供を呼んで、レモンの木からひとつ教え lesson を受けようじゃないかという。父親はいう。「愛を信じちゃいけない、愛はレモンのようなもの」、そして……。

  レモンの木はとてもきれいだ 花の香りもすごく甘い
  でも果物としてははひどい 食べられたもんじゃない

これがリフレイン(繰り返し)。それから2番で、少年が大人になり、恋に落ちる。しかし3番で彼女はほかの男のもとに走り、ぼくは絶望の淵であの時の父親の言葉を思い出す。そしてまたあのリフレインがやってくる……。さあ、当時はよくわからなかったけど、今ならいくつかの解釈が思い浮かぶ。

  1. 人は見た目じゃない。どんなに容姿端麗で着飾っていようと、中身がなかったらどうしようもない。「本当の愛は外見ではなく、中味=人間性による」。

  2. 逆にいえば、人は見た目で判断しがちである。いい悪いではない、人間はそうなりがち。「本質的なこと、一番大切なことは目に見えない」といったのは『星の王子さま』のサン=テグジュペリだったか。ヴィジュアル重視の現代への痛烈な批判?

  3. 昔は父親の言葉を聞き流していたぼく、でも失敗して初めて気がついた。人は失敗しないと学べないんだ。失敗の重要性。

  4. 父親の話も実はみずからの失敗経験から出ていたんだろう。おじいちゃんも同じ轍を踏んだのかもしれない。だから人類の歴史とは失敗の繰り返しなんじゃないか。痛い目にあって初めてわかるんだから。ゲーテも同じようなことをいってなかったか。いやそれでも懲りない面々もいるかもしれない。それが愛すべき?人間というもの。

ほかにもいろんな解釈が可能だろう。それにしても愛らしい曲。昔はよかったなんていう気はさらさらないけど、噛めば噛むほど味が出る曲が流れてたんだな。