シルヴァー・ガールは聴く人の心の中に?―「明日に架ける橋」

先日、TBS の名曲誕生物語SONG TO SOULの「サイモンとガーファンクル/明日に架ける橋」を観た。それで10代にはじめて聴いて以来、感銘を受け続けてきた曲のさまざまな側面が明らかになった気がする。

  • 曲の基本的なイメージの根底にあったのはゴスペルだった。サブドミナントの多いコード進行は明らかに宗教曲風だし、フィーチャーされるピアノもゴスペルの楽器である。

  • 歌詞はクロード・ジーター作とされる 「メアリー・ドント・ユー・ウィープ」(1959年)がヒントになった。曲調は異なるが、応援歌的精神が起源を物語る。

  • bridge over troubled waterというラインは同曲のbridge over deep waterに由来する。ただし元になったのは聖書の句(ポール・サイモンはそのことを知らなかったという)。もともとゴスペルは共有財産のような音楽である。

  • 最初はポールが書いた2番までのささやかな賛美歌だった。

  • アートがそこにフィル・スペクターばりの壮大な構想を抱いた。

  • 彼は3番の歌詞を書くようにポールに要請し、曲の形ができた。

そのほかにも、いろいろな情報が面白かった。

  • ピアノに続いて2番目に入ってくる楽器はヴィブラフォンであり、2番の歌詞とともに天使のようなコードが響く。
    そうだったんだ、あの絶妙なサウンド。印象的だったが、すべて即興だったとか。

  • 3番の盛り上がりのところの衝撃音はチェーンを床に叩きつけて得たという。

ほかにもあるけど、最後、

  • 新しく書かれた3番の歌詞の silver girl のインスピレーションのもとにあったのは、当時のポールの妻ペギーだった。

「あの頃、彼女は白髪が目立ち始めていた。でも白じゃない、輝く銀色なんだ、とポールはいったんだ」。そしてアートはさらに言葉を続ける。「歳をとることをいい方に変えたんだ」。

ということは、わたしなんかこの曲はこれから社会という大海原に出て行く若者を後押しする歌だと思っていたが、成長のあらゆる段階で、人生のあらゆる局面で支えとなる音楽なんだということになる。しかしアートはすぐに加えた。

「でも本当の意味を知る必要はない。それぞれ自分の解釈を作者のメッセージと考えればいいんだ」。まったくそう思う。

わたしがずっと抱いていたイメージはこうである。銀色の光の中で淡い色彩が踊る海の面に漕ぎ出そうとする少女。目的地はまばゆいキラキラとした光芒の彼方にあるのだろう。彼女の姿はその光の照り返しを受けて、まさに「銀色の少女」のように輝いている……。シルヴァー・ガールは希望の象徴なのだろう。