「オールド・フレンズ」―ポール・サイモンにサティの響きが

サティの『ジムノペディ』第1曲の冒頭は、一度聴いたら忘れられないだろう。二つ和音(GM7-DM7)が繰り返されるだけ。寄せたり引いたりするハーモニーの波間に、旋律が無気力そうに入ってくる。印象深い。ドイツ・ロマン主義の「精神性」とか「偉大さ」といった重苦しい空気からの解放か。

たぶんポール・サイモンにとっても印象的だったんじゃないかな。アルバム『ブックエンド』(1969年)の中のテーマ・ソングともいうべき「オールド・フレンズ」でも、同じコード進行を使った。一聴すれば、明らか。意識的か、それとも無意識のどこかにこびりついていた響きだったのか、本当のところはわからないけど、最初のところ、何度も二つのコードを繰り返しているあたり、影響関係は間違いないだろう。


 曲は公園のベンチで、まるでブックエンドのように座る老人を通して、「老齢」「孤独」を歌っている。2番の歌詞はこんな感じ。

 オールド・フレンズ 残り少ない日々をともにする仲間たち
 コートにくるまったまま 陽が沈むのを待っている

響きだけでなく、内容も『ジムノペディ』の雰囲気から触発されたのかもしれない。落日は、いうまでもなく、老人の行く末を暗示しているのだろう。曲はこの後、ちょっぴり現代音楽チックな展開を見せ、そこでもあの二つの和音が繰り返され、重要な役割を果たす。やはりサティの影響が濃厚か。


それにしても、ここで歌われているテーマは、まさに高齢化社会を迎えている現代の課題でもある。と同時に、すべての人の問題でもある。ポール・サイモンは何と遠く未来と人生を見据えていたのだろう。